遺産分割協議書の作り方はお分かりですか
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※本記事は2020年05月27日に書いた記事です。
ご家族がお亡くなりになって、相続をすることになった場合、遺産を誰がいくら相続するのかを決めなければいけません。その際に「遺産分割協議書」というものを作成しなければなりませんが、行政書士や弁護士等の専門家でないと様式や書き方が分からずにが多いと思います。
遺産分割協議書がなければ、銀行や不動産の名義変更ができないため、相続の際には大変重要な書類です。遺産分割協議書のことについてを簡単にまとめましたのでぜひご確認ください。

そもそも遺産分割協議書とはなにか?
遺産分割協議書は、相続人全員が、故人の遺産をどのように分割して相続するのかを正式な書面にしたものです。この遺産分割協議書の内容に、相続人全員が合意し、相続人全員の実印を押印することで、法的効力を持ち、故人名義の財産の名義変更が可能となるのです。
様々な財産の分割の仕方がある。
様々な財産の分割の場合があります。
例えば故人が現金400万円の遺産を遺していて、それを相続人(法定相続分はここでは平等)4人で分けるとしたら、一人100万円ずつきれいに分けることができます。
では、故人が実家の土地建物(価値2000万円)と1000万円の現金を遺していて、それを相続人の兄と弟で分ける場合はどうでしょう?この場合は一人が
土地建物(価値2000万円)を相続する代わりに、もう一人の相続人に対して500万円を別で支払わなければなりません。
まとめると
一人は土地建物(価値2000万円)-500万円(支払い)=1500万円手にした。
一人は現金 (1000万円) +500万円(もらった)=1500万円手にした。
となります。これを代償分割といいます。
代償分割とは、代償分割を行うためには、遺産分割協議書にその旨を記載しなければいけないため、最終的な遺産分割協議書の書き方も変わってきます。
相続人の中に未成年者・障害者・意思能力がない者がいる場合もあります。
相続人の中に、単独では法律行為を行うことができない人(未成年・障碍者・成年被後見人等)がいる場合には、家庭裁判所が選任した特別代理人等が代わりに遺産分割協議に参加します。その場合、遺産分割協議書の最後の署名押印欄が通常とは異なる書式となりますのでその際は一度行政書士などに相談しましょう。
遺産分割協議書の具体例と注意事項
それでは遺産分割協議書を作るうえまず作成の流れをイメージしてみましょう。
作成の手順
①パソコンのワードなどで作成することも可能。パソコンか手書きかをまず決める
②タイトルは「遺産分割協議書」書きましょう。
③故人(亡くなった方)の最終の本籍地と住所地を記載(住民票と戸籍を参考をする)
④故人の氏名・死亡日を記載する。そして、細かい分割の内容を書く前に以下のような前書きを書く。
平成○年○月○日、東京都北区赤羽10丁目1-1 遺言太郎の死亡により開始した相続の共同相続人である遺言 一夫、 遺言 三男 の2名は、その相続財産について、次の通り分割を協議し、決定した。
⑤番号をつけて相続人ごとに記載していく。特に順番に決まりはないが、通常は年齢が上の者から順に記していく。第1条としても、数字だけ1、2としても、アルファベットでも相続人ごとに分けて書いて順番ごとになっていれば法律上問題ありません。
⑥遺産を書き終えたら、借金等の債務の記載を⑤と同じ方法で行う。
⑦「後日判明した財産」についてどうするのかの記載を行う。この遺産分割協議書を記載している以降に万が一財産が見つかった場合の取り決めをしておくという意味合いになります。
⑧作成年月日を記載。
⑨相続人全員の住所・氏名を記載の上、実印にて押印。※認印は不可です。
⑩複数枚になる場合には、製本して実印で割印を押印して完成
■作成上の注意ポイント
1⃣不動産については、登記簿謄本の記載事項と一言一句同じように書き絶対に間違いのないようにしましょう。
理由は、不動産の相続登記の際には遺産分割協議書が登記上必要となり、不動産の登記簿謄本と遺産分割協議書に記載された不動産の記載に齟齬があると、最悪の場合登記できないという可能性がでてきます。 登記簿謄本はお近くの法務局にて、誰でも取得することができます。下記サンプルの赤字部分の情報を転記します。
登記簿謄本はお近くの法務局にて取得することができますが、取得したら特に参考にすべき項目は、
【土地】なら表題部の
・地図番号
・筆界特定
・地番、地目、地積
【建物】なら
・所在
・家屋番号
・種類、楮育、床面積
に注意しましょう。
2⃣預貯金や株式については、金融機関名・支店名・普通定期の種別・口座番号を特定できるように書きましょう。例えば、故人がA銀行の池袋支店と六本木支店に口座を所有していたようなケースはどちらの口座の話か特定できなくのがまずいということになります。
③退職金や生命保険金は遺産分割協議書に記載する必要はありません。なぜなら退職金や生命保険金はあらかじめ契約等によって取得する人が定められているため、民法上遺産分割協議の対象から外されています。
④自筆での署名が絶対ではありませんが提出先によっては(税務署等)自筆を求められることがあるため、後日のトラブルを避けるためにも相続人全員が自筆でサインをすることをおすすめします。押印は、必ず実印で押印します。その際には印鑑証明書もセットで必要となります。
割り印の方法
遺産分割協議書が、2枚以上になると全ての内容に相続人が同意したことを証明するためにも複数枚になる時は製本と割印が必要となります。一枚のみで遺産分割協議書が作成できた場合は不要です。
まず陰惨分割協議書をホッチキスで留めて、その後で100均などに売っている製本テープで包みましょう。最後に表紙もしくは裏表紙のどちらかに製本テープと本紙にまたがる形で、相続人全員が実印で割印を押印して完成です。
以上が遺産分割協議書の基本的な作成方法になります。
以下で、遺産分割協議書の書き方でよくある疑問点をまとめました。
遺産分割協議書の書き方についてのよくある疑問点
①マンションがある場合の書き方は?
マンション1室が遺産にある場合の書き方も、通常の土地や建物と同様に、登記簿謄本に沿った記載となりますが、マンション1室の場合は、建物全体の記載をした後に所有している専有部分と持分である敷地権の記載をしなければならないため、表記が長くなります。
②共有持ち分がある場合の不動産の書き方は?
故人が土地の権利のうち、二分の一を所有していたような場合、遺産分割協議書にも、その旨を記載する必要があります。最後に「持分」の表記を加えるだけです。
③実印での押印が必要か?
遺産分割協議書の最後に、相続人全員が押印しますが、必ず実印で押印する必要があります。遺産を法的にどのように分けるのかを示す重要な書類となりますので、偽造や改ざん等を防ぐためにも、実印で押印することが必要となります。
④全員集まらないといけないか?
必ずしも全員が集まらなければならないわけではありません。例えば、郵送で順番に署名捺印していくという方法をとっても問題ありません。遠方に住んでいる相続人の方がいらっしゃる場合には有効であると思います。
⑤後日、財産が見つかった場合は?
遺産分割の話し合いをした時には、認識していなかった財産が後日新たに見つかった場合に備えて、通常、遺産分割協議書には、
「本協議後、後日、新たに被相続人の遺産が確認または発見された場合は、改めて相続人間で遺産分割協議を行うものとする。」
というものか
「本協議後、後日、本協議書に記載なき被相続人の遺産が確認または発見された場合は、相続人〇〇〇がこれを取得するものとする。」
という文言を書いておきます。
前者は、新しく見つかったらまた相続人全員で遺産分割協議をするという内容で、後者はもし新しく見つかったら誰のものになるかを先に決めておくということです。
追加の財産が出てきた場合には、追加の財産についてのみ新たに遺産分割協議書を作成する必要があります。後者は必要ありません。
どこに提出するのか?
不動産があるなら法務局
・預貯金があるなら銀行等の金融機関
・株式があるなら証券会社等の取引金融機関
・自動車があるなら陸運局
・相続税申告を行う必要があるなら税務署
⑥海外に相続人が住んでいる場合にはどうすればいいか?
海外には、日本のような「印鑑証明書」という実印を公的に登録する制度はありません。したがって押印の点で問題になります。その場合は、
1.
作成した遺産分割協議書を在外公館(住んでいる国の日本国大使館、総領事館)に持参して、担当官の面前で、サイン証明の用紙に署名および拇印を押印します。
2.遺産分割協議書と在外公館で発行したサイン証明書を擦り合わせて、担当官に割り印をしてもらいます。
となります。使館等に足を運び、担当官の面前でサインをしなければならないため、手間と時間がかかります。一度行政書士や弁護士に相談した方がトラブルが少ないと思います。
以上、いかがでしたでしょうか?複数の相続人で分割するには必ず遺産分割協議書を作成しなければいけません。覚えておきましょう。
最後に遺産分割でもめ事や紛争になった場合は弁護士に相談しましょう。それ以外の遺産分割協議書や遺言の執行などは行政書士が街の身近な法律家ということもあり料金面でも頼みやすいので今回の場合だと一番適任だと思います。覚えておきましょう。
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