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※本記事は2020年12月01日に書いた記事です。

期間を定めて働く有期雇用の労働者は、契約更新を重ねていって通算5年を超えると無期雇用になれます。これはいわゆる「5年ルール」というもので7年前に法整備されました。
しかし5年を超える直前に雇止めをされてしまう人が後を絶たなく各地で裁判が起きています。
今月17日の日本通運の裁判
日本通運で上記の問題に関する裁判があり、日本通運副社長の秋田進副社長が証人に呼ばれました。
上記のような有期契約の労働者が、5年を超える目前で雇止めされたことに対して訴訟が起きましたが、これに対し日本通運側は減らしにくい無期雇用の増加が「経営上のリスク」だとの表現をし、当該問題を正当化したとのこと。
原告の弁護士は5年ルールについて「法律が目指したのは逆の方向だ」と趣旨が違うことを主張、批判したが、それに日本通運側は「そうは思わない」と返答したとのことです。
争点
男性の契約書に「通算して5年を更新することはない」
との記述があった。「不更新条項」と呼ばれるもので男性は最初の雇用時とその後の契約書にサインをしていた。
男性側は仕事ぶりも会社側に認められ、5年後の更新の可能性も示されていて、男性としても契約を継続しないと失業してしまう弱い立場にあったため契約書に疑問点があってもサインせざるを得なかったとのこと。
したがってこの状態では「不更新条項」は自由な意思に基づく同意がなかったとして無効を訴えている。
日通側は、
- 厚生労働省のパンフレットを参考に適正な制度を作るために労使で協議もした。
- 男性側に更新がある可能性も示したが、5年後以降の更新は約束していない
との主張をした。
5年ルールについて
5年ルールは改正労働契約法に盛り込まれ13年から施工されています。
契約期間が「通算」5年を超えた労働者が無期雇用への転換を希望したら雇う企業側は拒むことができないというものです。
法整備前から懸念されていたのは、人件費の固定化を嫌う企業側が5年が経つ直前に雇止めしてしまうのではないかということでした。
当時の政府の答弁では「ルールを避ける目的で雇止めをすることは法の趣旨に照らして望ましいものではない」とありまして、今回の日本通運側の主張が法の趣旨にはそぐわないことが分かります。
その他の同様の裁判では
契約が何度も更新されて次の更新への「期待感」が認められる場合は簡単に雇止めできず、正社員の解雇と同じように合理的な理由が必要になります。
「雇止め法理」と呼ばれ5年ルールと一緒に労働契約法に明記されました。
最近は「不更新条項」の効果を否定して雇止め法理を踏まえ、雇止めを無効とする判決も多々あるようです。
3月の福岡地裁の裁判では、博報堂で1年契約を29回更新していた契約社員の裁判で、契約書に不更新条項を記載した状態で、5年目前で雇止めにしたことは無効になりました。
判決は、
「不更新条項」がある契約書に署名押印したからといって契約を終了させる意思を明確に表明したとみることは相当ではない」として無効にしたとのことです。
以上、不更新条項が書いてあっても契約更新無効になる可能性がありそうです。
当方としては、有期雇用等の非正規労働者の待遇がよくなることを願っています。企業側もよりいっそう契約について慎重になる必要があり、そのうえで自社の利益獲得につなげられればいいですね。
東別府拓真行政書士法務事務所
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